【ステージ1】
 エンジンの振動より、さらに大きな振動がシートに伝わって来る、どうやら爆撃が
始まった様だ、この基地も政府にバレたに違いない。政府の行動は素早い邪魔な芽は
さっさと摘んでおきたいという事だろう。

 『エンジン出力75%』とコンソールに表示された、声のない味気ない反応だ。
 「待っている余裕はない!」俺は会話が成立するか考えずに作業を続ける。
実際の発進作業は各機関のチェックも行わなければならないのだが、今回は一気に
省き、車輪を格納するスイッチを押した。警告のブザーが鳴るがおかまいなしに
操作を続けた。

 補助ブースターがビリビリと音を立てている。爆音と振動で計器類にノイズが入る。
振動に相反するようにゆっくりと機体は動き始め出口へと向かう。

 滝の流れる発進口から出た途端上空に黒い影が見えた、爆撃機だ!
『レーダーに敵影を捕捉』「見えている!」いらつく暇も無く、影が通り過ぎた
かと思うと辺りには爆弾の雨が降り始める。

 俺はレバーを強く握りペダルを踏みしめた。これまで感じた事もない加速に
体がバラバラに成りそうになる。雨のように降る爆弾のすき間を見つけ、ねじり
込むように機体を動かす。 ガン・ヴァイパーの操作レバーに対するレスポンス
は人間の事を無視した様に敏感に反応する。さすが究極兵器と言わせるだけの事は
ある。通常の人間ならとっくに失神しているだろう。

 『谷間を抜け海上へ行け』作戦指示が今置かれている危機的状況に関係なく
コンソールに表示される。その間にもレーザーのボタンを握り、サブウェポンの
コントロールを行い爆弾を蹴散らす。

 爆弾が降り注いでいるにもかかわらず、どこからとも無く敵が現れ始めた。
作戦はバレていたのだろうか?疑問も浮かんだが俺の仕事は計画を遂行するのみ、
不要な考えは捨て、敵を倒す事に集中した。

 俺は大きく操縦レバーを動かし敵の位置を確認した、機体はギシギシと音を
立てて敵に向かう。名前の通りまるで毒蛇(ヴァイパー)が獲物を捕らえるかの如く
素早く反転すると。サブウェポンの方向も調整し敵にレーザーを浴びせた。
敵は避ける暇も無く、激しい光と共に散って行く。

 敵の反応はワンテンポ遅れている。この動きは敵の機体には人間ではなく、
機械がコントロールしている事を示している。実際に機械は的確なコントロールを
するのだが"カン"による判断は行わない。従ってこちらの取った行動が計算外に
なると一瞬戸惑いを見せる事になる。

 『大型戦闘艦を捕捉』コンソールに表示された内容に目を疑ったが、それは
間違いでは無かった。巨大な戦闘艦が俺の下ギリギリをかすめ飛んで前方に回った。
『DANGER』の警告がHMDにまで表示された。
 「やばい」言葉を発する前に、カニの様な大型戦闘艦は向きを変えて攻撃態勢に
入り始めた。
 通常、戦争では戦闘態勢に入る前には敵から『降参スルカ?』の警告が通知
されるはずなのに、今回は躊躇も無く攻撃態勢に入る所を見ると、どうやら反乱軍
に対して完全に排除命令が出ている様だ。

 こんな時はさっさと倒すに限る。俺はサブウェポンの向きをザコから大型戦闘艦に
向け直した、目ざわりな警告が消えると同時に敵に全レーザーを浴びせる。
敵の戦闘艦の鼻先でレーザーが弾け飛び火花が飛び散る。

 ついに作戦は決行されたのだ、もう戻ることのできない最終決戦の火ぶたが
切って落された。

【ステージ2】

	
【ステージ3】